怒れる人々

今週はニュースで感情的に行動する人々を多く見た気がする。5月並みの温かさが数日続いたかと思えば長雨で冬に逆戻りしたり、天気も忙しい。梅は雨で散ってしまったところも多いだろうが、桜の開花はもうすぐかかりそうだ。

さて、表題の「怒れる人々」を3つ挙げたいと思う。

まず国内において、怒れる野党連合(依然として一枚岩ではない)。

ここ毎日、政界は森友問題による財務省の文書改ざんスキャンダルの泥仕合を見せ付けている。

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8日の野党合同集会(共同通信より)

立憲民主党蓮舫参院国対委員長「佐川さんの証人喚問、1日でも早く議決することが、国民の声だと思っている」(3月15日のFNNニュースから引用)

希望の党今井雅人氏(衆院財務金融委員会で麻生財務大臣に)「なぜ忖度がなかったと断言できるのか。断言できるはずがない」(3月17日読売新聞から引用)

と、与党攻撃に勇ましい。インタビューで蓮舫をやたら見ると思ったら、枝野氏はインフルエンザだそうだ…

そして自民党内部も揺れており、関心はポスト安倍に移っている。

政府関係者「財務省爆弾の威力はすさまじい」(3月17日時事通信から引用)

岸田派の一人「岸田派も首相をライバル氏する石破派も活発に動くだろう。展開次第で首相は出馬を諦めるかもしれない」と見る向きも。(同上)

 

さて、次は英国の怒れる首相。

こちらは内政ではなく、外交だ。突如として現れた外敵により国内がこれまでになく一丸となっている。

発端は、去る3月4日、イングランド南部ソールズベリーのショッピングセンターで、元ロシア・英国の二重スパイだったセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリア氏が、ベンチで意識を失った状態で発見された事件だ。ロンドン警視庁はロシア製神経ガス「ノビチョク」による殺人未遂事件と発表。最初に二人に近付いた警察官と合わせて三名が重体に陥っている。

ロシア人元スパイは英国に亡命するのが規定路線なのだろうか。思い出すのは、2006年に放射性物質ポロニウム210」入りの紅茶を飲んで死亡したアレクサンドル・リトビネンコ氏だ。

そして今回のこの事件を受けて、ボリス・ジョンソン外相並びに、テリーザ・メイ首相はロシアに激怒している。

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15日、議会でメイ首相(fntalkより)

メイ首相「イギリスに対する無差別で無謀な攻撃だ」(3月14日ニューズウィークより引用)

ジョンソン外相「われわれの争点はプーチン大統領が支配するロシア大統領府で、第二次世界大戦以降初めてとなる英国、および欧州の路上での神経剤の使用はプーチン大統領自身が決定した公算が非常に大きいと考えている」(3月17日ロイター通信より)

 

英政府はロシアに対し事件の説明を求めていたがロシアが回答しなかったため、23人のロシア外交官を国外追放する方針を14日に発表。(同上)

また英米独仏の4カ国の首脳は、15日、異例の共同声明を発表した。ロシアが事件に関与した可能性が「極めて高い」として、「安全を脅かすものだ」と強く事件を非難したうえで、ロシアに対し、化学兵器禁止機関(OPCW)への神経剤情報などの資料提供を求めた。(3月16日産経新聞より)

 

とこちらは、矢継ぎ早に対策を打って来たメイ氏。米独仏首脳との共同声明はNATOとEUも協調しているもようだ。Brexitではゴタゴタだが、この対応で与党保守党は一致団結したようで、その対応は驚くほど迅速である。英国は自国内でこのような犯行が白昼堂々と行われた(メイ氏は「主権を脅かされる」と表現)ことに我慢がならないのだ。

 

そして最後は米国の怒れるティーンエージャーたちだ。

2月14日にフロリダ州Marjory Stoneman Douglas High School(マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校)で起きた銃乱射事件からちょうど1カ月の節目に、学校の外に出る「ウォークアウト」大規模デモが全米各地で行われた。参加人数は2,000人以上とされる。動機はもちろん、自分達の安全を確保するためだ。これは切実な願いだろうが、お上に受け入れられるかどうかというと極めて難しいだろう。

デモの主催者「ウィメンズ・ネットワーク」は、米連邦議会が銃による暴力への対策に失敗していることを非難している。

ホワイトハウスは今週、学校での銃乱射を抑止する対策案を公開したが、トランプ大統領が繰り返し主張する、半自動小銃の購入可能年齢を(現行の18歳から)21歳に引き上げる案は含まれていなかった。

その代わり対策案では、学校の教職員が銃火器を扱えるよう訓練するという、物議を醸しているトランプ氏の提案が押し進められている。(3月15日のBBCニュースより引用)

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14日、全米各地でデモ行進する高校生(usnewsより)

「僕たちは無為に座っていることにも、政治家が実際に何もせずに何をやろうとしているのかを話すのを聞いてることにも飽き飽きしている。 そして、僕たちはそういった大人たち──僕たちはどうでもいいみたいに、自分たちが何をやろうとしているのか言うこと──にもうんざりだ」(3月14日のWashington post ''Thousands of students walk out of school in nationwide gun violence protest''より引用・訳)

 

これは16歳のミネソタ州の高校2年の青年の弁だ。彼はまだ16歳なので残念ながら選挙権はないが、このデモ行進に参加した生徒達の心境の一面なのだろう。彼らはそれぞれ「もうたくさん」「二度と繰り返すな」などの手書きのボードを掲げて行進をした。既に投票権を持つ18歳の生徒の中には「銃規制に反対する候補は私達が落選させるだけ」という声もあった。

米国では銃乱射事件が起きる度に、銃規制の論争が起こってはいつの間にか消え、また事件が起きるというのが何度も繰り返されている。銃規制反対派がいつも前面に押し出すのが、かの有名な合衆国憲法修正第二条「武器保有権」だ。

 

はたから見ていると「銃購入に関するいかなる規制にも反対する」と豪語したNRAは悪代官そのものだ。裕福な家の子女が通う私立学校は隔離された場所で門扉と警備員によって厳重に保護されており、事件に巻き込まれる心配もない。ここでもこの国の格差による国民の分断が見える。

 

デモ行進に参加した生徒の一人は「デモで何かが変わるとは思っていない。でも私たちが声を上げ続けることには意味があると思う」と言っていた。

米国のデモ行進や抗議運動というと、キレイにプリントされたカラーボードが思い浮かぶ。安全な環境で学校生活を送りたいと願う米国の子供が何か別の主張や権力に悪用されなければいいが。